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2021 April - ひとりじゃないよ、ドゥーラに頼っていいんだよ!



 みなさんは「ドゥーラ(Doula)」という職業をご存知ですか?語源は古代ギリシャ語の「女性の使用人」からきており、現代では妊娠・出産や新生児のケアに精通し、産前・中・後の母親やその家族を様々な形でサポートする専門家のことをドゥーラと呼びます。助産師(Midwife)とは異なり、費用は政府ではなく個人負担の有料サービスです。家族や友人に頼る代わりに、より知識や経験豊富なプロのサポートを求める人のニーズを満たす比較的新しいサービスとして浸透してきています。ドゥーラにはいろんな種類がありますが、主なものは次の3つ。

 ●Antepartum Doula
  妊娠期間を支える分娩前ドゥーラ
 ●Birth Doula
  分娩をサポートする出産ドゥーラ
 ●Postpartum Doula
  出産後の母親とその家族を支える産後ドゥーラ

 その他にも養子縁組を経て新たに子供を受け入れた家族を支えたり(Adoption Doula)、母親の出産時やその直前・後に上の子供に付き添ってサポートしたり(Sibling Doula)、流産や死産、胎児の末期診断を受けた妊婦やその家族を支えたり(Bereavement Doula)と、様々な場面に対応するドゥーラがいます。
 もとより出産には不安が付きまとうものですが、特に初産、高齢出産、多胎児、家族の一時的なケアやサポートが必要なケースなど、それぞれ抱える不安やニーズがあるはずです。かくいう筆者も出産後は緊急帝王切開後の肥立ちが悪く、腹部の傷跡の痛みや痒みを経験したり、授乳の悩みや痛みを相談できる人がいないまま不安な日々を過ごしたものです。一人で思い悩むより、専門家に助けを求めるという選択肢がドゥーラです。さらにコロナ禍中では、家族や友達の助けを借りることがままならなかったり、外出自粛で家にこもり孤独を感じたりしている妊婦さんをはじめ、また新たなニーズが出てきているのかもしれません。
 日本人の産後ドゥーラとしてエドモントンで活躍するSAYAKAPOPPINS Postpartum Servicesの沙也香さんに具体的なお話を伺ってみました。


産後ドゥーラって具体的に何をするの?
 「出産は交通事故にあったようなもの」と聞くことがありますが、母親は産後ゆっくり休むことだけに集中するわけにはいかず、体内外に傷を抱えながら新生児のお世話をすることになります。また産後6週間にわたって悪露や子宮収縮の痛みが続き、ホルモンの急激な変化、夜間授乳による寝不足などにも悩まされます。産後ドゥーラはこの転換期をサポートし、お母さん、赤ちゃん、家族の皆さんが快適に過ごせることを目指すサービスです。
 ドゥーラのサービス内容はそれぞれ異なりますが、私は産後ドゥーラとして次のようなサポートを行なっています。

ポイント1 : 実用的なサポート
 産後のお宅を訪問し、家事育児のお手伝いをします。産後のお母さんの体と心の回復のために一緒にできることを、そしてこれからの生活のために、家族が分担しながら続けていける方法を探します。例:赤ちゃんのお世話、食事の準備、お買い物代行、洗い物、簡単な掃除、赤ちゃんの洗濯物など。

ポイント2 : 精神的なサポート
 産後の家族全員の話し相手になります。心の健康は産後の家族にとって大切です。意見や批判することなく耳をかたむけ、ただそっと側にいたり、元気づけたり、笑い合える存在を目指します。例:日本語と英語での会話、他のお子さんのお世話、日本語ママグループなど。

ポイント3 : 情報的なサポート
 赤ちゃんのあやしかたや授乳のテクニック、発達や行動に関すること、母体の回復に関することなど、それぞれの関心や悩みに沿った適切な情報をお伝えします。例:根拠に基づいた情報の提供、他の専門家への橋渡し、生活や子育てのアイディアなど。


産後ドゥーラが行わないことは?
 産後ドゥーラは、助産師やラクテーションコンサルタント(母乳育児の専門家)の様に医療行為や診断、体重測定、体温測定、治療を行うことはありません。
 産後ドゥーラは家事育児代行ではありません。赤ちゃんを迎えた新しい生活が軌道に乗り、お母さんをはじめとする家族みんながハッピーに暮らしていけるようにお手伝いするものです。家族によってどんなサポートが必要か、どんな選択をするかは異なります。これから産後を迎えらえる方は、自分にどんなサービスが必要かぜひ一緒に考えてみませんか?


どうやってドゥーラを選べばいいの?
 ドゥーラのほとんどは個人事業主としてウェブサイトやSNSを持ち、クライアントを募集しています。また、数人のドゥーラやその他の専門家が集まってコレクティブやエージェントとして活動している場合もあります。エドモントンでは「Association for Safe Alternatives in Childbirth」という団体が「Birth Issue」という出産、産後に特化したフリーマガジンを発行しており、地域のドゥーラが広告を掲載しています。また、ドゥーラ養成団体のウェブサイトから地域別に登録ドゥーラを検索したり、担当の産婦人科や助産師に紹介してもらえるケースもあります。(主なドゥーラ養成団体には、Doula Canada, DONA、CAPPAなどがあります。)
 ドゥーラを選ぶポイントで一番大切なことは「自分に合っているかどうか」だと思います。知識や経験を加味することも大切ですが、サポートする人の人柄や雰囲気、話し方によって、産後の生活の中でかえって負担が出て来る可能性があるからです。例えば、訪問のたびに家の中が散らかっているとか、どうして着替えていないのかと指摘する人だったらどうでしょうか?こちらの話を聞く前に、アドバイスやお説教してくる人だったら?その人が来る度に綺麗にしておかないといけないと罪悪感を持ったり、余計な仕事が増えるなら、それは「本当に助かるお手伝い」ではないのかもしれません。資格、トレーニングを受けたドゥーラは、産後のサポートに自分の価値観を持ち込んではいけないと学んでいるので、資格があるかどうかも選ぶポイントになります。とはいえ、資格取得中でも口コミや紹介で活躍しているドゥーラも沢山いますし、そもそも資格がなくてもドゥーラとして働くことはできます。どちらにせよ契約前に実際に会ってじっくり話してみることをおすすめします。
 私は2018年から「Doula Canada」という団体に所属し、資格取得を目指しながら研修生の様な立場で活動を続けています。この春に資格取得を予定していますが、研修生活が終わっても色々な講座を受け、勉強を続けることが必要だと考えています。たとえ日本人同士でも、利用される方とドゥーラの相性が合うことは大切なので、もっと認知度が上がることでドゥーラを目指す方が増えると嬉しいです。


産後ドゥーラの料金はどのくらい?

 産後ドゥーラは10時間~30時間のパッケージサービスが主流で、1回の訪問で利用できる時間は産後ドゥーラとの話し合いで決めることができます。最短2~3時間、ナイトサポートで一晩利用できるプランを提供しているドゥーラもいます。時間単位に換算すると1時間あたり$20~$40程度。パッケージを使い終わった後は、時間ごとの料金でサポートを受けることができます。サポート期間は人それぞれですが、分娩後すぐから赤ちゃんの1歳のお誕生日までの間で、産後ドゥーラと話し合ってその都度決めていきます。

ドゥーラ利用経験者の体験談
 4年前の初産時にドゥーラを利用されたというカルガリー在住の鈴木さんに体験談をお伺いしました。
「私も夫も出産時の手伝いに来てくれる家族がおらず、初めての出産に不安を感じていた時、助産師さんからドゥーラサービスについて聞きました。当時は産前・産後ドゥーラなどの区別はあまりなく、妊娠末期の自宅訪問、陣痛が始まってから出産までの付き添い、産後の自宅訪問を全て含むサービスが主流だったことを記憶しています。
 オンラインで調べて数人に絞って直接お会いした中で、出産に対する考え方が似ていて、意気投合し、信頼のおけそうな方を近所に見つけてお願いしました。出産時の付き添いの他に産前と産後に2度ずつの自宅訪問があり、出産中の写真撮影や赤ちゃんの出産の様子を文章化したバースストーリーが付いたサービスで$1200でした。高い費用に悩んだものの、振り返ってみれば出産当日はあのサポートなしには乗り越えられなかったのではないかと思うほど、私と夫の両方にとって心強くありがたい存在でした。
 産前訪問では分娩に関する知識や妊婦向けのヨガやストレッチ、運動を教えてもらい、出産時は陣痛の始まった朝5時から赤ちゃんが産まれた深夜12時まで休みなくずっとそばに付き添ってくれました。陣痛の苦しい時の励ましだけでなく、痛みを和らげるマッサージや呼吸法の指導、助産師を呼ぶタイミング、さらには助産師や夫のサポートまで全てをこなすスーパーウーマン。出産の喜びを共有して、まるで彼女は家族の一員同然の存在でした。産後もおむつの取り替え方から授乳の指導まで様々な相談に乗ってもらいました。
 出産は人生の一大行事だし、どう転がるかわからないから、出費は覚悟でドゥーラを雇うことは決して悪いことではないと思います。安産だったらいらない出費だったと思うかもしれないけど、難産の時の苦労を考えたら、サポートがあるとないとじゃ大違い。赤ちゃんが産まれてからも初めてで戸惑うことばかりだから、医師や助産師以外に相談できる専門家がいるとストレス軽減できます。会ってみて『この人なら頼れる』と確信が持てて、かつ気の合う相手を見つけることをお勧めします。」



文/じゃぱなび編集部
協力/SAYAKAPOPPINS Postpartum Services

参考文献
Doulas and Support During Childbirth, MyHealth.Alberta.ca
https://myhealth.alberta.ca/health/pages/conditions.aspx?Hwid=tn9822

Canadian Womenʼs Health Network
https://cwhn.ca/en/yourhealth/faqs/doulas

Doula Canada
https://doulatraining.ca/

SAYAKAPOPPINS Postpartum Services

・産後ドゥーラのサポート(訪問・オンライン)
・0歳児対象赤ちゃんたいそうクラス
・ベビー&産後ベーシッククラス
 産後ドゥーラサービスをご検討中の方の利用相談は初回無料です。オンラインのサポートとクラスはアルバータ州に限らず、世界のどこからでもご利用いただけます。詳しい情報、ご利用料金はウェブサイトをご覧ください。

Website : sayakapoppins.weebly.com
Facebook : sayakapoppins
Instagram : sayakapoppins_babies






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