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2017 July - BC州選挙で不透明感が増すパイプライン計画

 去る5月9日にブリティッシュコロンビア(BC)州議会選挙の投票がありました。アルバータ州在住の皆さんは隣の州の選挙だから関係ないと思われているかもしれませんが、実はそうでもないのです。

政権を握るのは自由党かNDPか
 この選挙は事前の支持率調査から新民主党(NDP)有利という予想でしたが、実際には自由党が善戦しました。開票日の速報では両党が交互に優勢を示したシーソーゲームの様相で、どちらが政権をとるのか最後まで分かりませんでした。翌朝に最初の集計結果が報道されて驚きました。解散前は全87議席中47席を有していた与党自由党が、今選挙で43席まで議席数を減らしたものの辛うじて第一党の地位に留まることができたのです。しかし過半数(44議席)には届かず、「BC州で久しぶりに少数与党政権誕生か?」という報道が流れていました。
 票の再集計の可能性はあるものの、5月末時点の開票結果は自由党43議席、NDP41議席という僅差。そして存在感をみせつけたのが1議席から3議席に躍進した緑の党です。
たったの3議席で州議会において政党として認知されるために必要な最低議席数にさえ達しなかったわけですが、自由党もNDPも緑の党と議席を合わせれば過半数に達するため、緑の党が政権の行方を左右するという状況になりました。連立政権の可能性を含め、今後の見通しは現時点で不透明です。


選挙結果に翻弄されるパイプライン計画
 さて前号の記事でBC州政府がトランスマウンテン拡張計画を支持したことを述べました。これは自由党政権下での決定でしたが、もし今後NDPが政権をとることになるとどうでしょう?NDPはこのパイプライン計画に反対の立場を表明してきています。ジョン・ホーガン党首は選挙前に自由党政権による承認によっても自分の考えは変わらないこと、そして「ありとあらゆる手段を用いて(トランスマウンテン)パイプラインを阻止する」と発言しています。
 トランスマウンテンパイプラインは1853年に日量15万バレルの搬送能力で建設され、その後の拡張を経て現在は30万バレルの能力をもっています。今検討されている拡張計画は、これをさらに89万バレルに拡張しようというものです。これに伴い、現在月に5隻という割合でバーナビーのターミナル(バンクーバー港)から出ている原油輸出用のタンカーは34隻に増える計画です。さらに現在このパイプラインは一本のパイプを使ってオイルサンドで生産される重質油と石油製品を区分して混送しているのですが、拡張後は重質油の用枠が増え、これまで限られていた重質油の搬送能力が今の約3倍になる見通しです。
この一連の増加が意味するのは、これまでアメリカ中西部の製油所に集中して輸出されていたオイルサンド原油の市場が太平洋圏に拡大することです。市場が広がることにより販売価格が上昇してオイルサンド産業に追い風となり、アルバータ州経済にもよい効果がもたらされるという訳です。


連邦政府の足踏み
 昨年5月にカナダの国家エネルギー委員会(National Energy Board)はトランスマウンテンプロジェクトが国民の公益に貢献するとの結論を出しました。その答申を受けて同年11月にカナダ連邦政府は同パイプライン拡張を承認していますが、他方でジャスティン・トルドー連邦政府首相は政権獲得以前から環境と先住民を重視する立場を強調してきました。前政権のように資源開発を真後ろから支援してくれる姿勢はありません。さらにトランスマウンテンパイプラインと同じようにオイルサンド原油を西海岸に搬送するノーザンゲイトウェイパイプラインに対しては厳しく反対する立場を貫いています。
 今回のBC州での選挙結果を受け、トランスマウンテン拡張計画に反対するNDPが政権を取る可能性が残る状況下、トルドー首相はどのような立場を取るつもりなのでしょうか?先ごろ同パイプラインのターミナルがあるエドモントンを訪問し、BC州の選挙結果がこの拡張事業にどのような影響をもたらすのかについてコメントを求められたトルドー首相は慎重に言及を避け、かねてからの持論の「経済開発は環境保護とのバランスをとりながら実現することがカナダ国民にとって重要である」という政治優等生的な発言に終始しました。これは新しいBC州政府の形をまずは見極めようという立場です。この分かったような分からないような発言をするトルドー首相とは対照的にアルバータ州のノトリー首相の立場は明解で、「そのプロジェクトが国民の利益に貢献すると判断した連邦政府の決定を、ある州政府が覆すことができる術などない」と発言しています。同じNDPとして政権を率いるノトリー首相はBC州NDPのホーガン党首と対話を始めていますが、同じ政党でありながら、れぞれの州益の壁は高く、まだ意見の一致点は見出せていないという状況です。
 カルガリーの景気、アルバータ州の経済は石油産業の状況に左右されます。そしてオイルサンド産業にとって太平洋岸までパイプラインを伸ばして市場を拡大することは重要な意味があります。BC州の選挙結果がこうした動きに大きな影響をもたらすことを考えると「隣の州の選挙」と傍観しているだけでは勿体ない事象なのです。この記事が掲載される頃には政権の行方は判明していることでしょうか。さて、アルバータ州の経済はどうなるのでしょう?

風谷護
カナダ在住は20年を超えるエネルギー産業界のインサイダー。
趣味は読書とワイン。





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