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2019 July - ウィルソン=レイボールド、カナダ政界の彗星となるか?

 前号で取り上げた女性政治家、ジョディー・ウィルソン=レイボールド氏の後日談から書き起こします。筆者はバンクーバー空港で彼女と行き会う機会がありました。小柄ですが、信念がそのまま体格に表れているような存在感のある人物でした。ターミナルの通路を歩きつつ、多くの人に声をかけられ、にこやかに応じていました。その姿は、落ち着いた調子の声と明快な話し方で証言していた連邦議会の委員会の時と同じように説得力あるものでした。大臣を辞任し、結局は所属政党とも仲違いしたオタワの「敗者」ではなく、英雄のオーラをまとった政治家という印象でした。
無所属で戦う次の総選挙
 先ごろウィルソン=レイボールド氏は、今年内に実施される見通しの次期連邦議会総選挙に無所属で立候補することを発表しました。前号には間に合いませんでしたが、彼女は4月にトルドー首相率いる自由党から除籍処分を受けたため、その後の動向が注目されていました。彼女の無所属立候補の発表を受けて、出馬予定のバンクーバー・クランビル選挙区で行われた投票行動調査では、投票に行くと決めている人の中で、無所属候補を支持するとした人は自由党候補の支持者数を僅差で上回りました。このような調査につきものの誤差を考慮すると、両党が互角であるという評価が公平です。
 自由党は前回の2015年選挙で落選した候補者を隣の選挙区から移動させてウィルソン=レイボールド氏と戦わせるつもりです。政党からの組織的な支援や集票活動が選挙戦において有利に働くことは明らかです。しかし彼女には一連の政治スキャンダルに毅然とした立ち向かった知名度と存在感があり、支持政党を持たない投票者の行動に大きな影響を及ぼすことでしょう。また女性としての共感、先住民出身であることへの支援の心理も投票パターンに作用するでしょう。何よりも、当選する可能性の最も高い候補者に投票したいという「死に票」を嫌う投票者が多いことが彼女の後押しになるかもしれません。
 カナダの政界では無所属候補の当選率はとても低く、1974年以来、これまで属していた党を離れ、無所属候補として総選挙に再出馬して再選された人数は僅か4名という歴史があります。総選挙が近づけばメディアが各政党の公約を頻繁に取り上げますが、無所属候補は広範な政策提言が難しく、埋没してしまう危険があります。その結果、候補者としての注目度が下がり、当選が難しくなるという負のサイクルに巻き込まれるのです。ウィルソン=レイボールド氏はカナダ政界のこれまでの常識を覆す彗星のような存在になり得るのか、今後盛り上がる選挙戦に注目です。

風谷護
カナダ在住は20年を超える
エネルギー産業界のインサイダー。
趣味は読書とワイン。






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