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2020 July - 知っておきたいカナダの法律

事実婚・同棲カップルが別れた時のお金の話 Part 1
文/東谷陽子 Barr Picard Law 弁護士

 「結婚せずに同棲しているだけだから、自分の給料で買ったものは私の物でしょ?」とか、「僕の家に彼女が引っ越してきてからうちの不動産価値が上がったからと言って彼女が得するわけじゃないでしょ?」と思われている方。アルバータ州の法律が変わったので、注意が必要です。
 結婚は式を行って結婚届を提出するので、結婚と離婚に伴う法的義務が生じるのはやむを得ないと思う人が多いでしょう。しかし結婚する前に、もしくは結婚する代わりに同棲という手段をとるカップルが多くいます。同棲しているカップルの場合、個人資産は法的にどのような扱いになるのか、またそもそもアルバータ州の法律が同棲や事実婚をどう定義しているのかについてご説明いたします。


以前は煩雑だった事実婚破局後の資産分割
 実は昨年までは事実婚が破局した際、どのように財産を分けるかを明記した法律はアルバータ州にはありませんでした。そのため別れたら財産分与を希望する側が、どうしてその権利があるかを裁判官に証明しなくてはなりませんでした。また権利を証明しても、どれだけの分与があるかは裁判官の判断に任されていました。そのため事実婚カップルの資産分与は煩雑で、特に資産のない側の人に不利でした。
 ところが、2020年1月1日から以下に関する法律が変わりました。


(1)事実婚をしている人が別れた時の財産分与
  厳密にいうと「事実婚をしている人」でなく、「相互依存関係にある成人」であり、相互依存関係については下記に説明します。


(2)結婚をしていない親に生まれた子供の養育費

今回は(1)の財産分与に関する法律の変更について説明します。


破局後の財産分与は事実婚も結婚も同じ扱いに
 2020年1月1日にアルバータ州の「MatrimonialProperty Act」が「Family Property Act」に改名され、内容も一新されました。最大の変更は、以前は既婚カップルだけに適用されていたこの法律が事実婚カップルにも適用されるようになった点です。簡潔に言うと、同棲期間中に形成した財産は、どちらが多く貢献したか(どちらの給料から支払われたか)に関係なく、基本的にすべて半々に分けられるようになりました。
 今までも結婚していれば、結婚している間に得た財産は離婚時、基本的には半々に分けられていたので、結婚と事実婚の区別がなくなったことになります。この変更により事実婚が破綻した際の資産分与の手続きは簡潔になるでしょう。
 「基本的に」と書きましたが、もし取得に使われたお金が遺産によるものだったり、同棲前からあったお金だったりすると、同棲中に取得されたものでも分ける必要がありません。例えば、同棲中にカップルの片方が親から遺産をもらって、そのお金で車を買った場合、破局時に車の価値を分ける必要はありません。ただ遺産で土地を買って、その土地の価値が同棲中に上昇していたら、上昇部分は分与の対象になりますので注意が必要です。
 資産を分ける意志がないから、結婚せずにあえて事実婚を選んだカップルもいます。そのような場合、同居契約書(Cohabitation Agreement)を作成し、「もし別れることになったら資産を平等に分けない」と合意しておく必要があります。すでに事実婚を始めているカップルでも今から同居契約書を作成することができます。注意が必要なのは、同居契約にサインする際、それぞれが別の弁護士を使うことです。


事実婚の定義は?
 この新しい法律では事実婚パートナーのことを一般的に使われている「Common-Law Partner」という言葉ではなく、「Adult Interdependent Partner」つまり「相互依存関係にある成人」という言葉で呼んでいます。この法律では、結婚していない二者間の「相互依存関係」を以下の3点全てを満たしているものと定義しています。

  • お互いの生活の場を共有すること
  • 精神的な絆を確立していること
  • 経済的に、そして家庭として機能ていること
 二人が「経済的に、そして家庭としてひとつのユニットとして機能している」かどうかの判断には色々な要素が考慮されます。例えば婚姻関係に等しい関係を持っているかどうか、二人の関係がどれだけ密接か、家で役割分担があるか、お互いを思いやった行為が見られるか、金銭的に依存しているか、子供の世話はどうしているか、物を一緒に購入したり使ったりしているか等が影響します。
 これを踏まえて、「相互依存関係にある成人」とは以下の二つのどちらか、もしくは両方に当てはまる人を指します。

A.「相互依存の関係」を3年間以上継続しているか、または子供をもうけたり子供を養子にしたりしてある程度の半永続的な関係が成り立っている場合。

B.「Adult Interdependent Relationship Agreement」(相互依存関係にある成人の間で結ばれる合意書といった意味)に合意した場合。この合意書の作成例は「Adult Interdependent Relationship Agreement Regulation」に提示されていて、オンラインでダウンロード可能です¹。各パートナーにつきそれぞれ二人の証人の立会いのもとにサインをする必要があります。

 ルームメイトは、上記Aに書いたようなお互いに依存した関係ではなければ、3年間以上一緒に住んでいても事実婚とは見なされません。また血縁関係や養子縁組でつながっている成人が相互依存的に3年間以上同居していても、前出の「Adult Interdependent Relationship Agreement」を登録していない限り、事実婚パートナーであるとは認められません。合意書があれば血縁関係があってもパートナーになれることを考えれば、日本の「事実婚」より許容範囲が大きいです。
 次号Part 2では、結婚をしていない親に生まれた子供の養育費についてご説明します。

注釈
1. https://www.canlii.org/en/ab/laws/regu/alta-reg-66-2011/latest/altareg-66-2011.html
 https://www.canlii.org/en/は一般の人もカナダの法律を無料で調べられる貴重なウエブサイトです。




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