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2020 SKYT - ユーコンの圧倒的な大自然

 白夜、オーロラ、ユーコン川、カヌー、犬ぞり…。カナダの極北・ユーコン準州と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう。カナダに住む大多数の人にとって、アラスカの隣に位置するユーコン準州は、北の遥かに遠い土地というのが現実だろう。ユーコン準州は日本の国土の約1.3倍の大きさに、人口がたった約3万8千人で、その大地のほとんどは無人の原野。アルバータ州(日本の国土の約1.75倍)の人口は約430万人といえば、いかにユーコン準州の人が少ない自然の宝庫というのがわかるだろう。
 ユーコン準州に住む多くの人にとって、自然と向き合うことは日常茶飯事であり、娯楽といえばアウトドアと言われるほど、大自然が日常生活の一部となっているのである。近年はユーコンの自然に魅惑されてカナダ国内や海外からより多くの人が訪れるようになり、観光業も鉱業と並んで主要産業になりつつある。今回はユーコン準州の大自然の魅力を、アウトドアや自然体験という観点からお伝えしよう。

白夜のシーズン、夏
 ユーコンのアウトドアといえば夏。ハイシーズンが始まる6月は日が暮れることのない白夜の季節であり、原野での体験を求めて夏には多くの観光客が訪れる。ユーコンといえばなんといってもユーコン川のカヌー下り。約3,190キロもある大河ユーコン川は、州都のホワイトホース周辺の上流部が最も美しい場所である。1日体験からキャンプ道具や食料を積んでの1週間以上の川下りの旅まで、ユーコン川のカヌー下りはホワイトホースが拠点となる。人の気配のない原野をカヌーで下り、キャンプをしながら漕いで行くのは、カナダならではの体験といえるだろう。
 ハイキングが好きな人にとっては、ユーコンはどこでも歩き放題のパラダイス。中でも世界遺産のクルアニ国立公園やトゥームストーン州立公園はトレイルが整備された人気スポットで、圧倒的な自然のスケールを体感できるスポットだ。アラスカとカナダの国境をまたぐ「チルクート・トレイル」も人気ハイキングコースの一つである。またキャンピングカーを使ってのドライブも人気があり、アラスカハイウェイなどをドライブしながら、大自然の景観や野生動物の姿を楽しむことができる。ユーコンには州政府が運営するキャンプ場(無料の薪を含んで1泊12ドル)がハイウェイ沿いに多くあり、ドライブを楽しみながらキャンプをしたい人にとってはとてもありがたい施設だ。

紅葉とオーロラ到来の秋
 極北ユーコンの1年で最も色鮮やかな季節となるのが秋。8月の後半ともなると、トゥームストーン州立公園付近では秋の紅葉が始まる。ツンドラの大地が赤や黄色に染まり、カラフルな絨毯を敷いたような大地へと様変わりをする。白夜が終わった夜にはオーロラが舞い戻り、8月の後半からはオーロラシーズンが到来する。オーロラは寒い冬にしか見えない印象が強いものだが、実際は秋から冬を通して春まで見ることができる現象だ。秋のオーロラはそれほど寒くない中で見ることができ、まだ凍っていない湖面に映る「逆さオーロラ」も秋のオーロラならでは楽しみ方である。キャンプをしながらオーロラを見ることができるのも秋の特徴であり、日中はアウトドアを満喫して夜はオーロラ鑑賞という、目一杯に自然の中で遊びたいという方には最適の季節だ。
 9月中旬になるとホワイトホース付近ではアスペンやポプラの黄葉が始まり、ハイウェイ沿いは黄色のアスペン街道へと様変わりする。オススメのクルアニ国立公園では、カナダ最高峰のローガン山(5959m)や世界最大級の氷河地帯も存在し、セスナ機の遊覧飛行では手軽に地球規模の大スケールを感じることもできる。ユーコン準州は隣のアメリカ・アラスカ州とも陸路で繋がっているため、サーモンフィッシングや熊観察などをユーコン観光と合わせて楽しむ方も多い。

雪と氷に覆われる冬
 11月から4月中旬までと長い極北の冬。12月にもなると大部分の湖が凍って雪も積もり始めるため、本格的な冬シーズンの到来となる。冬といえば既にイメージが定着しているオーロラ鑑賞。ユーコンの冬は日照時間が短く、その分オーロラを見ることのできる時間が長くなるが特徴的だ。12月から4月中旬までが冬のオーロラシーズンで、カナダ国内はもとより、日本、オーストラリア、メキシコなどから観光客がオーロラを求めて訪れてくる季節だ。
 ホワイトホース付近は山や湖、川などの様々な自然の魅力が溢れる場所で、「ただオーロラを見るだけでなく、周辺の景色を楽しみながらオーロラを見たい!」と言う方にとっては最高の場所だろう。写真撮影が好きな人にとっても、ホワイトホース付近は最適のオーロラ撮影地である。単にオーロラを撮るだけのオーロラ鑑賞地は他にもあるが、山や湖、川を入れての「風景の中にあるオーロラ写真撮影」となると、ホワイトホースがベストであろう。
 アクティブ派には、オーロラを追いかけながら移動する「オーロラハンティングツアー」がオススメだ。ゆったり鑑賞したい方には、ホワイトホースにいくつか存在するロッジ滞在型のオーロラ鑑賞が良いだろう。少し足を伸ばしてホワイトホースの北に行くと、かつてはゴールドラッシュで沸いたドーソンシティーの街がある。オーロラベルト直下に位置するドーソンはオーロラ鑑賞地としては穴場的な存在で、これから人気が出てくる鑑賞地であろう。
 数ある冬のアクティビティで人気があるのが犬ぞり体験。戦後にハイウェイができる以前の時代には、ユーコンでは冬の交通手段として犬ぞりが使われたいた。今ではリクリエーション的な要素が強い犬ぞりだが、半日体験から2日以上の原野の犬ぞり体験など、様々なツアーが存在する。犬好きの方にぜひ見て頂きたいのが、毎年2月に開催される国際犬ぞり大会「ユーコンクエスト」だ。州都のホワイトホースからアラスカ州フェアバンクスの1,600キロもの距離をいく犬ぞり界のオリンピックのようなもので、世界一過酷な犬ぞりレースと言われている。マッシャー(犬ぞりを運転する人)と14頭の犬たちが厳しい冬の原野を走っていく姿は、一度見ると病みつきになってしまうファンも多い。日本人女性で唯一ユーコンクエストを完走している本田有香さんの著書「犬と、走る」は、その感動的で豪快な生き方を知る上でも一読して頂きたい本である。

寒さの緩む春
 そして長かった冬が終わる4月の終わり。雪解けと共に春一番の花のクロッカスが咲き始め、極北ユーコンにようやく春が到来する。気温も上昇し、アイスフィッシングなども快適に楽しむことができる季節だ。ツアー期間としては4月中旬に終わることが多いオーロラも、実際には日本のゴールデンウィーク前後までは見えるものだ。5月中旬からは渡り鳥の飛来も活発化し、世界各地から200種類以上の鳥たちが極北を目指して集まってくる。春(4月〜5月)は観光客も少なく、大自然を独り占めにしたいと言う方にはオススメの季節だ。
 四季を通して大自然を楽しむことができるユーコン準州。その魅力が世界に広まるにつれて徐々に訪れる人が増えてきているが、他の観光地と比べるとまだまだ人が少ない穴場スポットだ。ホワイトホースには日本人が経営するアウトドアのツアー会社やアウトドアギアや防寒具のレンタル会社も存在しており、日本人ならではのきめ細かなサービスを受けることができる。飛行機でのアクセスも良く、そのホスピタリティーで有名なAir Northのフライトでは、カルガリーやエドモントン、ケロウナからホワイトホースまで快適に飛ぶことができる。ユーコンはどの季節に訪れても、その圧倒的な大自然を満喫できることは間違いないだろう。カナダに滞在しているうちに、是非訪れたい場所の一つである。

文・上村知弘
ユーコン・ネイチャーガイド会社
tNt Nature Connections代表




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