JAPANとALBERTAから、JAPANAB(じゃぱなび)と名付けられた無料タウン情報誌。
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2017 October - アイヌ音楽演奏家による来加公演

 今年の9月で姉妹都市関係締結37年周年を迎えた北海道とアルバータ州。そんな遠く離れた2つの地域をつなぐ共通項「Indigenous Culture」を通じて更に絆を深めようと、この夏北海道からアイヌの演奏家集団3名がアルバータ州にやってきた。8月11日にはアルバータ州の先住民族・ブラックフットの常設展示があるFort Whoop Up博物館(レスブリッジ市)で、また8月12日にはカルガリー市内で行われた第7回Calgary Japanese Omatsuriの舞台に出演し、どこか懐かしいような不思議な伝統楽器の音色と、耳に優しいアイヌ語の歌詞を聴かせてくれた。
 今回アルバータ州を訪れたのは演奏家集団「アイヌ・アート・プロジェクト」のリーダー・結城幸司さんと、口にくわえた薄い竹材を振動させることで様々な音色を出す独特の口琴「ムックリ」の演奏者・早坂ゆかさん、三味線や三線に似た弦楽器「トンコリ」奏者の福本昌二さんの3名で、レスブリッジで行われた公演には、アイヌの3名に加えてブラックフットのダンサーやドラマーも参加し、二つの地域をつなぐ「Indigenous Bridge」と名付けた公演でパフォーマンスを披露した。公演中には、アイヌ民族の伝統音楽の演奏にブラックフットのドラムが加わったり、ブラックフットのダンサーのステップにアイヌの3名が飛び入り参加するという一幕もあったり、文字通りの異文化コラボレーションに会場を訪れたおよそ200人の観客は大いに沸いた。さらに、翌日行われたカルガリー公演では、Calgary Japanese Omatsuriの屋外ステージに舞台を移し、午前と午後の2度にわたっておよそ20分間の演奏を行った。Omatsuriの会場内ではほかにもアイヌの木彫りの民芸品や、伝統的な住居様式を紹介する写真パネルなどの他、魔を払うとされる独特の模様をあしらった刺繍や伝統衣装などの解説展示もあわせて行われた。
 レスブリッジとカルガリーの2公演で演奏された曲はどれも古くから伝わるアイヌ民謡などで、身の回りの動物や自然への尊敬と感謝、畏れといった素朴でありながら力強い感情がアイヌ語で表現されている。リーダーの結城さんは「アイヌの世界観はとてもシンプル。今回演奏させてもらった曲も、神様がいて、自分が大きな力によって生かされているということに対する感謝の気持ちを歌っている。そういう意味では“食べ物を与えてくれる大地や自然に感謝しながら生きる”というブラックフットを始めとするカナダの先住民族の世界観と非常によく似ていると言えるかもしれません」と話す。
 迫害や差別から権利回復へと続く近代のブラックフットの歴史とアイヌの民族の歴史もまたとてもよく似ているといい、日本国内でも近年になりアイヌ文化振興法の成立などによって固有の文化が見直され、アイヌ民族への認知度が高まりつつあるという結城さん。異なる文化を受け入れ、尊重する寛容性をいかに育てていくか、という意味で、ファーストネーションを始めとする様々な文化に彩られたカナダの多文化共生主義(Multi Culturalism)から、日本はまだまだ多くを学ぶことができる。今回の公演はアイヌ民族という新たな切り口での日本文化紹介というだけにとどまらず、日本での、またカナダでの異文化理解という深い示唆に富んでいた。

取材:じゃぱなび編集部




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