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2018 July - カナビス合法化へ

 皆さんご存知でしょうか(または、覚えていらっしゃいますでしょうか)?ジャスティン・トルドー連邦政府首相は2015年の選挙に「娯楽用大麻の合法化」を公約に掲げて当選しました。それがとうとうこの秋実施されるのです。大麻(別称カナビス、マリファナは大麻の一種)は今年店頭販売が予定され、18歳以上なら誰でも入手できるようになります。実はカナダでは2001年に大麻医療法の第一版が制定され、医師の許可を得た患者であれば医療目的でマリファナを使用する事を認める政策を打ち出していました。更に、2016年8月には医療用大麻へのアクセス規制が緩和され、医師が大麻の医療目的使用を認めた患者自ら、または委託を受けた者が保健省に登録の上、医療上必要な限られた量の栽培を行う事が可能となっていました。そして、ついに嗜好用も合法となって、お酒のように店頭で購入できるようになるのですなぜカナダ政府は大麻を合法化し、規制する政策を望んだのか?
 カナダ政府は、以下の3つを合法化の理由にあげています。

  1. 健康を保護し、公共の安全を高める
  2. 不法薬物取引や栽培の利益を縮小する
  3. 若者が入手しにくいようにする
そして、カナダ政府は今回の合法化に当たって、次の事項を約束しています。
  1. 大麻の入手を合法化すると共に、その入手方法を厳格に規制し、慎重かつ秩序ある形で制限する
  2. 若者の大麻入手を制限する
  3. 犯罪者が不法麻薬取引から利益を得ないようにする
  4. 非医療目的の大麻使用を合法化し、厳格に規制するための制度を確立する
では、何が合法となるのでしょう?
 6月初めのカナダ政府ウェブサイトによると、18歳以上の成人であれば、以下が合法化されると制定されています。

  • 30グラムまでの合法乾燥大麻またはそれと同等のものを所有すること。
  • 30グラムまでの合法大麻を成人間で共有すること。
  • 州政府認可の小売業者から、乾燥または生大麻そして大麻油を購入すること。小売認可制度をまだ制定していない、もしくは制定しないことを選んだ州においては、個人が連邦政府認可の生産者からオンラインで大麻を購入することを可能にする。
  • 自宅での栽培は、個人的な使用目的でかつ認 可された種や苗から栽培されたものであれ ば、一世帯あたり4株までの栽培が可能。
  • 自宅で大麻を使った飲食品を作ることは、有 機溶剤を使用しない限り可能。
つまり、今までは規制していたにも関わらず実際には裏取引などで大量に出回ってしまっていたから、お酒のように合法化してしっかりと法整備をする事で大麻使用の秩序を守りましょうという事で合法化に踏み切ったのですね。

医学的な見地からみた大麻
 では、実際大麻って人間の体にどんな影響をもたらすのでしょう?現在カルガリー大学で製薬会社から派遣され痛みのメカニズムについて研究されている小川亨さんにお話を聞いてみました。
ジャパナビ: マリファナをはじめとする、いわゆる日本では禁止薬物となっているものにはどんなものがあって、どんな効果・副作用があるのでしょう?
小川: まず大きく分けて麻薬と覚醒剤があって、コカインは天然麻薬、ヘロインは合成麻薬、アンフェタミン、メタンフェタミンなどは覚醒剤に分類されます。麻薬とは鎮痛作用、麻酔作用を有する薬物で、特に皆さんがよく聞くと思われるものに、ケシから抽出されるモルヒネがあります。モルヒネは強い鎮痛作用があって、鎮痛薬として医療用途として使用されますが、呼吸抑制や重篤な便秘などの副作用や薬物依存を有することから、日本では規制薬物に指定されているのです。それに対して、覚醒剤とは中枢神経(脳)を刺激する薬物で、極度の興奮や多幸感(快楽)をもたらすことが知られています。睡眠を抑制することから、戦時中に不眠不休で労働させるために乱用されましたが、みなさんご存知のように非常に強い薬物依存をもたらすので、どこの国でも法律で厳しく規制されています。メチルフェニデートという薬物は、ナルコレプシー(突如、患者が意識を失い寝てしまう病気)の治療薬として医療用途として使用されています。
 これとは別にマリファナ・ハシシを代表とする大麻(カナビス)という薬物があって、今回合法化されるのはこの種の薬物です。大麻とはアサから抽出される物質の総称で、日本では大麻取締法で厳しく規制されていますが、依存性は酒やたばこより弱いと報告されている事もあり、アメリカ(一部の州)、カナダを含み医療用途として合法化する国も多くあります。
ジャパナビ: どうして人間は大麻を服用するようになったのでしょう?
小川: 記録があるのは紀元前からで、主に、嗜好品として使用されていたようです。幻覚作用を有するので、宗教儀式(非日常的な体験)などの道具としても使用されていたようです。
ジャパナビ: 合法化が決まってからよく話題に上るものに、大麻の医療的用途・効果というものがあるのですが、実際のところどうなのでしょうか?
小川: 薬としては口腔内スプレー製剤(Sativex®)が一部の国で承認されています。カナダやイギリスでは多発性硬化症(Multiple Sclerosis)の難治性神経障害性疼痛や痙攣の緩和、アメリカや一部EUではグリオーマ(癌)治療に用いられています。また小児患者を対象とした脳性まひによる痙攣の適応についても検討している国もあるようです。しかし、アメリカFDAはマリファナに医療的用途はないとの見解を示していて、未だ議論の段階にあります。
ジャパナビ: 大麻には常習性はあるのでしょうか?また、一度服用すると効果はどの程度持続するのでしょうか?
小川: 大麻はアルコールやたばこよりも依存性が低いという報告があります。しかし、薬物常用者では耐性(薬が効かなくなり、薬効の発現する量が増える現象)が生じて、使用する用量や回数が増えることもあります。薬物の半減期(薬が体内で分解されて、薬の効果が半減する時間)は長く、物によっては数日から一週間程度体内に留まることもあります。当然のことながら、大量のマリファナを服用すれば、効果時間は長くなります。精神疾患を引き起こす可能性があり、服用を辞めても改善しない場合もあります。
ジャパナビ: お酒を飲むと、酔った人は側から見てもわかりますが、マリファナの効果が出ている状態は見た目でわかるものなのでしょうか?
小川: 一般的に見た目で、マリファナの服用の有無を判別することは難しいと思います。
ジャパナビ: 実際、マリファナは安全なのでしょうか?タバコのように、喉や肺への影響、ヤニの付着などはないのでしょうか?
小川: 決して安全とは言えないと思います。精神疾患、循環器(心臓など)への影響が報告されていますし、タバコと同様、煙による害はあると思います。
ジャパナビ: 副流煙による周囲の人への影響も考えられるのでしょうか?
小川: 影響がないとは言えないでしょうね。

日本人コミュニティーへの影響
 小川さんのお話を伺うまで知らなかったのですが、大麻(カナビス)はいわゆる麻薬や覚せい剤といわれる薬物とは少し違うのですね。でも依存性は低いみたいですが、精神疾患や循環器系への影響など、やっぱり日本ではいまだに禁止されている薬物だけあって少し怖い気もします。
 また、意外と認識されていませんが、日本人は、日本の法律で麻薬類の使用・所持は国外犯規定により罰せられます。( 外務省の海外安全ホームページより抜粋)つまり日本人は、大麻の所持、栽培、譲渡・輸出入を禁止されていているので、合法化されたカナダでも大麻取締法が適用されます。合法の国で大麻を使用し、日本に帰国した際に発覚した場合、現行犯ではないので例え体内に残っていてもそれだけでは処罰されないかもしれませんが、その後、仕事や家族への社会的制裁(SNSで発覚し炎上の末、解雇というケース)のような影響が出るという可能性も否めません。海外だからバレないという安易な気持ちから、未知の嗜好物の摂取により病院のお世話になる可能性も十分考えられます。オランダでは、日本人旅行者が「ソフト・ドラッグ」を使用し,意識不明に陥り,警察に保護されるという事案も過去に多く発生しているそうです。
 ジャパナビでは、今回の合法化が今後カナダにどんな影響をもたらすのかとても興味を持っています。また、合法化された後の実態も報告していきたいと思いますので、みなさんのご意見、まわりで実際に起きたことなど、何かありましたらジャパナビまでお知らせください。




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