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2018 July - 良いチームワークが醸す旨いクラフトビール! 鴨田 学

 比類のない質の麦芽用大麦の生産国であるカナダ。世界第二の麦芽輸出国であり、その半分がアルバータから産出されている。品種の純粋性が保証されている高品質の地元の原料を使用し、現在アルバータ州には80社以上のクラフトビール醸造所がある。その中でも人気のクラフトビール醸造所、ワイルドローズブルワリー社。(以下ワイルドローズ)そこで活躍している日本人達が居るという噂を耳にし、この醸造所のマネージャーである鴨田学さんに取材依頼。ワイルドローズの醸造所と、醸造所直営のパブレストランを訪れ、試飲も兼ねながらインタビューに応じて頂いた。

夢を追いかけ、アメリカ留学
鴨田:大学を卒業後、当時はビールより好きだった鉄道の仕事に興味を持ち、JR東日本に就職しました。9年間程勤め、駅員、営業、そして東北、上越新幹線の車掌など、色んな業務を経験しました。良い思い出です。仕事は面白かったけれど、アメリカ旅行した時に漠然と“アメリカに住んでみたい!”という夢を持つようになりました。ワーキングホリデー制度の無いアメリカに行く為には留学という手段しかないと思い、英語の勉強を始め、会社を辞めて無理矢理留学という形で渡米。留学先はオレゴン州の小さな町ベンド(Bend)。そこは全米でも有名なクラフトブルワリータウンで、クラフトビールの美味しさに目覚め魅了され、自家醸造を始めました。その後、ブルワリーでの就職を試みましたが就労ビザ取得の壁は厚く、日本に帰る事になりました。

長野県での修行時代
鴨田:帰国後、長野県のクラフトビール社に6年間勤めました。この会社で良い上司や先輩に恵まれ、醸造について学ぶ機会があり、とてもラッキーだったと思います。定年間際だったキリンビールの醸造技師を会社がヘッドハントし、彼から手取足取り指導を受けました。また、大学で醸造学を専攻していた者や、アメリカでクラフトビールを作っていた者からも沢山教わりました。あとは、実地でいろいろ試飲して学びましたね、やっぱり飲んでなんぼなので。この会社に勤務している時に、親会社に勤める妻と知り合い結婚しました。

北米に戻り、クラフトビールを作りたい
鴨田:クラフトビールを作るなら、やっぱり北米に戻りたい。しかし、働くにはビザのハードルが高い。とにかく雇ってくれる所を探し、アルバータ州とBC州のブルワリーに履歴書を出し続けました。その中で、ワイルドローズが来ないかと言ってくれたので、2007年の9月に渡加。幸運だった面が多分にあって、創設者だった(今は別会社にいる)ジェネラルマネージャーが、以前日本でビール会社の設立に携わった事があり、日本の印象が良かったのではないかと思います。カルガリーは僕が居たオレゴン州ベンドと似て、標高が高くて乾燥していてとても過ごしやすくて気に入ってます。そこが好きで、2010年にカナダ移民権を取得しました。

クラフトビールと一般的なビールの違い
鴨田:The Alberta Small Brewers Associationのクラフトビールの定義によると、①小規模であること(年間生産量が4千万リットルまで)、②独立していること(クラフトビールメーカー以外の酒造メーカーに所有されたり、コントロールされたりしていない)、③伝統的な製法で作られていること、の3つの条件を満たしている醸造所で作られるビールを、クラフトビールと呼んでいます。

ワイルドローズで働く醍醐味
鴨田:自分達のビールを作るのは楽しいですね。醸造者がアイデアを持ち寄って、新商品を開発するチャンスもあります。自由な発想で試作し、会社に提案しても良い。遊びに近い要素も含め、イマジネーションを膨らませ、違うものを組み合わせたら、意外に良い物が出来るって事もありますし。一度仲間が作ったもので、これは飲めない!というのがありましたね。ビーツのビール!泥っぽくてマズかったです(笑)。自分のレシピでは、“Electric Avenue”という主力のブランドがあります。でも、誰がアイデアをだしても、一人の力ではこれだけの仕事は出来ないので、誰が発案したかはさほど重要ではないですね。最近は少し奇をてらわないとうけない傾向にありますが、シンプルであればあるほど誤魔化せないので、シンプルな中で、旨いビールを作る事を心がけています。もう一つ、ワイルドローズのパブレストランでは、目の前でお客様が自分が手掛けたものを普通に味わってくれるのを見れるのが嬉しい。お客様の声をダイレクトに聞けて、出来栄えに対する反応を見られるのも面白い。さりげない会話から「今日のはあまり美味しくない」と言われると、何が違うのかなと調べ、逆に何にも変わっていないのに「今日のは凄く美味しい」と言わることも。

日本人として大事にしてるポリシー
鴨田:日本人だからという意識は特にしてないです。単純に自分の信じるやり方で仕事をするだけです。ワイルドローズのチームの一人として全体的なハーモニーが上手く機能してくれればそれが一番。僕の仕事の9割はオーケストラの指揮者のようなものだと思ってます。重い物は一緒に持ってもらわないといけないし、一人ではなかなか出来ないですからね。一番大切なのは、社員がハッピーであれば、ビールもおそらくハッピーな物になるだろうと思ってます。

ジャパナビの読者の皆様にメッセージ
鴨田:せっかくアルバータでのクラフトビールを飲める環境にいらっしゃるので、まずは是非口をつけてみてください。好きな種類やタイプがあると思いますが、試すチャンスがあれば、いつもと違う物を飲んでみると意外と新境地が開けるかもしれません。ちなみに日本食や、ご家庭で作る料理と合わせるなら、小麦のビール、VELVET FOGというワイルドローズの人気商品が、料理の味を引き立てるだけの十分な香りと味わいがあるのでお薦めします。

インタビューを終えて
 ビール造りに対する情熱と謙虚な姿勢が印象的だった鴨田さん。チームワークに重きを置く彼の言葉を証明するが如く、ワイルドローズ社は2018年のCanada’s Top Small & Medium Employerの一社に選ばれている。マネージャ-である鴨田さんの温和な人柄が多分に貢献しているはずだ。すっかりワイルドローズのVELVET FOGの虜になって、後ろ髪を引かれる思いで醸造所を後にした。

鴨田 学(かもだ まなぶ)
 1968年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部卒業後、JR東日本に9年弱勤務。アメリカに住んでみたいという夢を叶える為、2年半オレゴン州ベンドに留学。クラフトブルワリ-タウンであるその地でビール造りに魅了され、帰国後はクラフトブルワリーに6年間勤め、ビール造りのノウハウを学ぶ。2007年、ワイルドローズブルワリー社に採用され、醸造者としてカナダに渡る。現在、Brewing & Cellaring Managerとして日々アルバータ州の人々に喜ばれるクラフトビール作りに尽力する。

Wild Rose Brewery Ltd


Wild Rose Taproom : 4580 Quesnay Wood Dr. SW, Calgary
Phone & Reservations: 403-727-5451

Brewery: 5505 72 Ave SE # 15, Calgary
www.wildrosebrewery.com




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