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2019 January - 第3回 教えて、陽子姉さん! 知っておきたいカナダの法律 遺言書Q&A

 2018年10月号掲載の前回に引き続き、 遺言書セミナーであがった参加者からの3つの質問に関して、東谷陽子弁護士の回答を詳しくご説明頂いた。
1.カナダに相続税ってあるの?
 カナダでは、相続人が相続する遺産に対して税金を支払う必要はありません。しかし、被相続人(亡くなった方)の死後もその人の所得税を払う必要はあります。要注意なのは、被相続人の生存中に価値の上がった投資資産に対する課税です。相続時に売っても売らなくても、「売った」とみなされてキャピタルゲイン税がかかります。例えば、被相続人が生存中に家を2千万ドルで買って貸していたとします(投資物件)。被相続人が死亡した時点でこの投資物件の価値が5千万ドルに上がっていたとしたら、その値上がりによる利益の3千万ドルに対してキャピタルゲイン税を払わなければいけません。もし相続人がその家を保持したくても、この税金を払えなければ保持できません。
 もしくは被相続人が株式会社を持っていた場合、会社設立当初の株価はほとんどありませんが、被相続人が亡くなった時点で市場価格が高くなっているならば、多額の所得税が発生します。そしてRRSPの場合、配偶者による相続に課税はありませんが、配偶者以外が相続する際にはやはり所得税を払わなければいけません。遺産相続時に発生する税金が払えるように、その税額に見合った生命保険に入っておくのも一つの解決策です。この点は会計士や税金に詳しい弁護士とご相談ください。

2.遺産管理人の仕事って何?
 遺産管理人とは、裁判所の許可を得て被相続人の遺産を管理する役割を担う人です。(詳しくは2018年10月号を参照ください。)遺産管理人は相続人に遺産を渡す前にまず、遺産から被相続人の葬式代、税金、そして借金を払います。そうしないと、これらを自費で払うことになるので要注意です。その支払い後、残った遺産を相続人に渡すのですが、遺産の相続方法によっては遺産相続人の仕事が煩雑になったり長期間にわたったりすることがあります。例えば被相続人が賃貸住宅を持っていて「死後すぐにではなく、あと10年貸し続けてから売ること」と遺言に書いてあったり、信託を設けて「配偶者が生きている間、月々千ドルを支給すること」と書いていたりする場合です。また遺産管理人には遺産の会計を相続人に見せる義務もあります。もし誰かが相続内容に異議を申し立てて訴えた場合、遺産管理人が応答しなければいけません。
 遺産管理人になるのは時間と労力がかかります。遺産全てを相続する人が管理人になるならよいのですが、もし第三者に頼んだり、複数いる相続人の中の誰か(例えば複数いる子供の一人)に頼んだりするのであれば、管理人に対する謝礼を遺書に記述すると親切です。記述してなくても遺産管理人がある程度の手間賃を受け取ることはできますが、他の相続人とのもめ事の種になり得ます。

3.弁護士は必要?
 遺言を作成する際に弁護士を雇う一番の利点は、その人の状況に合った法的アドバイスを得られることだと私は思います。私はいつも最初にクライアントと直接お話しして、遺言の内容を確かめます。「これはとても簡単な遺言なんだけど」と話し始めるクライアントの内容が、実は法律上、全く簡単でないことは多々あります。また「このような状況が起きたらどうするの?」と尋ねると、「そんな状況は考えたこともなかった」という返事が来ることがあります。そのため、一回目のミーティングに軽く一時間を費やすことは多々あり、そのあと「もう少し考えてから連絡する。」というパターンも少なくありません。
 弁護士の中にはクライアントと全く話さず、パラリーガル(弁護士業務を補佐する人)にクライアントからの指示に沿って遺言を作成させ、最後に被相続人のサインを見届けるだけという人もいます。そのような弁護士の費用は当然安くなりますが、それならば弁護士を雇う意味はあるのかと私は疑問に思います。とはいえ、弁護士が作成した遺言に不手際があれば、弁護過誤で弁護士を訴えることができるから、それが弁護士を雇う利点だという弁護士もいます。
 そして被相続人が亡くなった後に裁判所から相続する許可を得る際は、弁護士を雇った方が簡単だと思います。許可を得るために作成する書類は多く、煩雑です。しかも少しの間違いでも裁判所は容赦なく書類を突っ返します。弁護士を使っても、一回目の提出で全てうまく受理される割合の方が低いくらいです。この際の弁護士費は、通常、遺産から支払われます。





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