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2019 October - 第2回 教えて、陽子姉さん!知っておきたいカナダの法律 遺言書セミナーから

 8月4日(土)キャンモア、8月5日(日)はカルガリーとエアドリーにて開催された日本語による「遺言書セミナー」。ゲストスピーカーはBarr Picard Lawのパートナー弁護士、東谷陽子さん。遺言は自分の死後、大切な家族や友人にどのように財産を遺したいかを意思表示する大事な書類です。セミナー中、今まで考えたこともなかった問題があることに気付いたとか、間違って理解していたことに気付いたとか、衝撃の声や質問が途絶えませんでした。
 セミナーでは、まず、「遺言は必要なのか」という根本的な疑問提示から始まり、「もし遺言がなければどうなるか」について説明がありました。

遺言書が無い場合の相続
もしもその① 配偶者がいて、子供がいない場合
 全ての遺産は、被相続人の配偶者が相続します。
「配偶者」には事実婚の相手も含まれます。

もしもその② 配偶者と子供がいる場合
   現配偶者との子供がいる場合は、全ての遺産を配偶者が相続します。
 現配偶者以外の人との間に子供がいる場合は、まず遺産の15万ドル又は50%のうちどちらか多いほうが現配偶者に渡ります。残りの遺産の50%は現配偶者以外の人との子供達の間で均等に分けます。

もしもその③ 配偶者に連れ子がいる場合
 血のつながっていない子供は、養子縁組をしないかぎり、相続権はありません。

もしもその④ 配偶者は(離婚、死別などで)いないが子供がいる場合
 生きている子供間で平等に分配。ただし、被相続人が亡くなった時点で死亡している子供に子供がいる場合(被相続人の孫)、死亡した子供が相続する遺産は、その子供の子供(孫)の間で均等に分けます。

もしもその⑤ 相続人が18歳未満の子供のみの場合
 成人になるまで相続権がないので、成人するまでは遺産管理人が遺産を管理します。

もしもその⑥ 配偶者も血のつながった子孫もいない場合
 配偶者も子供もいない場合は、次の順番で相続人を決めます。同じ親等で複数の人が見つかった場合は、その人たちの間で均等に分けます。
 1.被相続人の親
 2.被相続人の兄弟、姉妹(被相続人と血のつながった兄弟に限られます)
 3.被相続人の祖父母
 4.被相続人の両親の兄弟、姉妹(叔父、叔母、伯父、伯母)
 5.被相続人の従妹
 5親等より離れると、相続権はありません。もし上記に書かれた相続方法から変更をしたければ、遺言が必要です。
 また、遺言がないと、遺産管理人(personal representative)が決まるまで時間がかかる可能性があります。遺産管理人は被相続人の財産を遺言書に基づいて分配する大切な役割をもちます。遺言がない場合、遺産管理人は以下の優先順位で決まります。
 1. 被相続人の配偶者
 2. 被相続人の子供
 3. 被相続人の孫
 4. 被相続人の子供でも孫でもない子孫
 5. 被相続人の親
 6. 被相続人の兄弟、姉妹
 7. もし相続権があれば、被相続人の甥や姪
 8. その他の親戚で、相続権のある人
 9. 被相続人との関係により、遺産に権利がある人
 10. その他の理由で遺産に権利がある人
 11. アルバータ州政府
 もし優先順位の低い人が遺産管理人になりたければ、優先順位が自分と同位かより上の人たち全員から「遺産管理人にならない」とする書面にサインをもらうか、裁判命令をとる必要があります。例えば配偶者も子孫もいない被相続人の親が高齢で手続きが大変だからと被相続人の兄弟のうちの一人が遺産管理人になろうとしても、親と全兄弟からの合意が必要です。特に、もし中に他国に住んでいる人がいるとそのやりとりがとても煩雑になります。遺言で遺産管理人を指定しておけば、優先順位の高い人たちが放棄する書類にサインをしなくてよいので、その分手続きが簡便になります。

遺言の利点
 他にも、遺言があると相続方法に変化をつけることができます。例えば、配偶者に一括で遺産を渡さずに毎月信託から生活費を渡したり、子供が18歳ではなくもっと年長になってから(例えば25歳になってから)遺産を渡したり、賃貸している不動産をすぐに売らずにそのまま人に貸して遺産を増やしたり指示することができます。

遺言は自分で作れるの?
 作れます。アルバータ州の法律によると、以下を満たしていなければいけません。

  1. 書面で示してあること(ビデオや音声ではだめ)
  2. その書類が遺言であることが明記してあること
  3. 被相続人のサインがあること
 ただし、言語については制限が書いてありません。実際、日本語の遺言がアルバータ州の裁判官に認められました。

 書き方には二通りあります。

  1. 被相続人が遺言に署名したのが自分であることを二人の証人に同時に伝え、それぞれの証人が被相続人の立会いの下、遺言に署名する場合
  2. 証人なしで全部を全直筆で作成した場合(自筆証書遺言書)
 アルバータ州はカナダでも珍しく、証人なしでの自筆証書遺言書を認めています。しかし、他の州では認められないので、大事をとって二人の証人をつけておきましょう 遺言を書く際、以下の点を入れておくと良いです。

  1. 過去に遺言を書いていたら、それを無効にするかどうか
  2.  遺産管理人の任命
  3.  子供が未成年の場合、後見人(Guardian)を指名します。後見人(Guardian)とは、子供が18歳未満の場合、被相続人に代わって子供の生活の面倒を見てくれる人です。
  4.  遺産分与の指定。細かく書いても、遺産管理人に全任してもよいです。

最後に
 この記事では、今回のセミナーの全てを網羅しきれませんでしたが、目から鱗のアドバイスの数々に参加者から「これは絶対聴講するべきだ!東谷先生の説明がとても分かりやすい」との賛辞が送られました。次回のセミナーは公に告知しますので、ふるってご参加下さい。個人的に東谷陽子弁護士に相談されたい方は、右の広告に連絡先が掲載されています。20分未満の相談は無料ですが、それ以上の相談や遺言の作成は有料です。

東谷陽子(あずまやようこ) Barr Picard Law パートナー弁護士
遺言や遺産分与、家庭に関係する法律を主に扱う。離婚や事実婚の破綻に伴って生じる、サポート、養育費、親権、そして財産分与などの幅広い問題を扱う。






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