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2019 October - カルガリー近郊の不動産市場

リアルター 高坂聡 X 住宅ローンアドバイザー ウェネンジャー美和

住宅ローン審査基準引き絞めの影響
美和:昨年末からカナダ金融庁の新しいガイドラインにより、住宅ローン審査基準が厳しく引き絞められ、借入可能額が大幅に引き下げられた為、必然的に購入力に影響を及ぼしました。トロントやバンクーバーの異常な住宅価格高騰を防ぐ意図が多分にありましたが、その影響はカルガリーにどう反映しましたか?
:それらの都市の局所的な高騰を抑えるために導入された金融引き締め政策ですが、借入地に拘わらず借入額が約20%減少すると言わた通り、カルガリー不動産市場でもその影響を見極めるための買い控え、あるいは実際に購入できる物件が小さくなる、購入可能物件が無くなるといった現実的な購入抑制効果をもたらしました。原油暴落の不景気から回復に向かいつつあったカルガリー不動産市場でしたが、金利上昇も相まって年初から半年間の前年同期比で販売数が17%減となりました。
美和:購買力が20%落ち、つまり50万ドルの家を買う予定が40万ドルの家しか買えなくなり、肩を落とした人が沢山いましたね。
:これだけ聞くと不動産購入を躊躇するかもしれませんが、月別でみると前年同月比で-27.3%の大幅減を記録した3月に底を打ち、その後はV字回復を辿り7月は-4.8%にまで戻しています。現在不動産価格変動の指標として良く用いられる水準価格では7月は戸建て物件で約50万ドル。前年同月比で-2.1%の微減に止まっています。
美和:例えば、住宅ローンを組んでその50万ドルの家を買う場合、頭金20%で他に借金が無いとすると家庭年収入が最低約9万7千ドル必要になります。勿論、クレジットレーティングにもよりますが。カルガリーの平均家庭収入が10万ドルなので、理にかなってますね。

とばっちりを受けたカルガリー市場
美和:コンドミニアムアパートメント市場(以下コンド)はどうでしょう?市場には売り物件が溢れていてるように感じます。
:新しい政策のもう一つの効果である「借入額の減少=売れ筋の価格帯が下がる」の結果として、コンドの購入が増え、長い間不景気の続いていたコンド市場の6月の販売数(需要)はついにプラスに転じました。未だ売り在庫数は多いのですが、新規売り物件数(供給)が前年比でマイナスに転じたことは顕著なトレンドの変化といえるでしょう。ちなみにコンドの7月水準価格は約26万ドル、タウンハウス等は約33万ドルとなっています。
美和:住宅ローンを組んで、26万ドルのコンドを買う場合、頭金20%、コンド料を$450/月と仮定すると、家庭年収入が約5万6千ドル必要ですね。33万ドルのタウンハウスなら家庭年収入は6万8千ドル。この10月からアルバータ州の最低賃金が15ドルに上がるので、この金額枠の購入が増える見込みがありますね。現在、投資物件を購入するには良い時期ですか?
:10年前の不動産価格ピーク時からリーマンショック、サブプライム問題、原油暴落、金融抑制策等読みづらい外部要因により不動産市場が左右されているので判断は難しいのですが、上述の4つの問題の中で注記したいのは原油暴落が不動産市場に与えた影響です。他の要因と異なる点はカルガリーがまさに震源地の一つであったため甚大な影響を受け、不動産市場の負け組となったこと。対照的にその副産物であるカナダドル安の恩恵を享けたバンクーバー、トロント市場は海外からの資金が流れ込み、年20%を超える不動産価格上昇を果した勝ち組になったのは記憶に新しいですね。史実として基本的に不動産価格はバンクーバー、トロント市場が上がればカルガリーも上がる同調傾向にありましたが、この原油暴落は前者と後者に大きなギャップを生み出すこととなりました。このギャップはいずれ反動力としてカルガリー市場にプラスの効果をもたらすでしょうし、過去10年間様々な問題を乗り越えつつも底堅かった事実は一つの判断材料となるのではないでしょうか。結果として現在カルガリーは10年前に到達した戸建て平均価格50万ドルとほぼ同じ位置にいます。 美和:不動産価格の高騰を抑える狙いで導入された住宅ローンのルール変更で、アルバータ州が犠牲になった。私達の仕事に大きな影響を与えてますね。 聡:僕の周りでは原油暴落後は物件売却依頼が7割、購入依頼が3割とバランスが崩れたのですが今年は購入・住み替え依頼や投資案件の問い合わせが増えている事実は考慮すべきところでしょう。美和さんの融資ボリュームにはそのような変化がみられますか?
美和:日本人のお客様は身の丈に合った物件をお求めになるので、無理な住宅ローンを組まない傾向にあります。物件の値段が少し下がり手が届く物件が増えた事と、銀行の審査が従来より厳しくなったことが要因で、私に関わらずモーゲッジブローカーにご相談に来るお客様は増加しています。

高騰続くキャンモア物件
美和:キャンモアは過去50年以上、不動産価格が上昇し続け、去年の一戸建てや二戸建ての平均売買価格がなんと90万ドル。タウンハウスで60万ドル。コンドは43万ドル。手頃な金額のコンド物件があっても、レンタルプール(タイムシェアのようなもの)や分譲ホテルなので、住宅ローンを融資してくれる金融機関がありません。観光業が盛んなのに、なかなか労働者の手が届く価格高の物件がないのです。町とキャンモアコミュニティハウジングコーポレーションが支援して提供する「アフォーダブルハウジング」を建てているけれど、物件の供給が需要に全く追いつかない。その為、通勤範囲のコクレンに物件を購入する人が増えているようです。ちなみに、バンフからカルガリーに向かう国道に大きな広告があり「LIVE COCHRANE PLAY BANFF」とありました。コクレンという町は、とても住みやすい所と聞きます。
:コクレンと聞くと真っ先に思い浮かぶのは不動産ではなくアイスクリームですね(笑)最近ではジェイマンのアクアティックセンターがオープンし子供たちの活動の幅が広がりました。バンフ・キャンモアの不動産価格高騰を避けたい方や、コクレン独特のタウン情緒を好む方に人気で2011年からの5年間の人口増加率はなんと47%とのデータがあります。今後10~15年のうちに人口は倍増する勢いで宅地開発も東西南北所狭しと進んでいます。最近は南の国道1号線寄りに位置するファイヤーサイドやリバーソングコミュニティ、旧道1A沿いでキャンモアに近い西側のハートランド、ヘリテージヒルの新興住宅地も人気ですね。増加する人口に対応するためボーリバーブリッジ架け替え、センターアベニューの拡張工事等々インフラ整備も順次計画施行されていて、街の発展の好循環には欠かせない要素になっています。
美和:車でコクレンからキャンモアまで45分位なら、カルガリーの郊外からダウンタウンまでの距離と変わらないですよね。

人気上昇中、カルガリーのベッドタウン
美和:同じように通勤範囲内で、大きく成長しているのがエアドリーですね。カルガリーの人気エリアは標準的な一戸建ては60万ドル以上しますが、エアドリーならその金額を払えば、かなり立派な家を買えると聞いた事があります。
:カルガリーを囲むベッドタウンはコクレン、エアドリー、チェスタミアーそしてオクトクスとありますが、中でもエアドリーは比較的不動産価格が低めですね。カルガリーの同等の物件と比べると10~20%安い感じがします。6月の水準価格ではカルガリーが43万ドル程度であるのに比べ、エアドリーは34万ドル台半ばと割安感です。エアドリーは上述の4つのベッドタウンでも最大規模の人口を誇り、コクレン同様2011年からの5年間の人口増加率は42%に及びました。今後も順調な人口の増加と雇用の創出が見込まれ、カルガリー・エドモントンへのアクセス、ストーニートレールを経たバンフへのアクセスの良さも考えると魅力的な住宅地としての需要がこれからも続くことでしょう。
美和:スタンピードブレックファストを提供したアマゾンが、バルザックに東京ドーム1.2倍の敷地と千人の雇用を準備していると発表しましたね。エアドリー、さらに熱くなりそう!





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